「あんなに一生懸命勉強してやっと合格できた大学なのに、
息子が大学をやめたいだなんて信じられないっ!!許せません!」
ご両親の嘆きには、本当に共感します・・・・。
許せない、とまで思ってしまう怒りにも似た気持ちは、どこから生まれるのでしょう。
子どもに幸せになってほしいと願う愛情からですか?
世間体を気にしている、あなたの見栄ではないですか?
子どものために払った犠牲に対して、見返りを求めている事と同じではないですか?
ちょっと意地悪な問いかけになってしまいました。
どうやら、親の心中というのは、ものすごく複雑な気持ちが入り混じっているようです。
かくいう私も、四年制大学を2年で中退しています。
当時の事を両親に聞いてみると、口をそろえて「理解不能だった。」と言います。
それもそのはずです。
両親は、高い学費をきちんと出してくれると言っていたし、それなりに難関大だったため私自身もものすごく努力を積んで、幸運にも入れた大学だったのですから。
自分が親になってみると、そんな複雑な親心というものも少しわかるようになりました。
では、子供が「大学を中退したい」と言ってきた時、
親はどのような対応するのがベストなのでしょうか。
それでは、くわしく見ていきましょう。
大学中退は親不孝?子供の人生は子どもが決めること
大学を中退することが親不孝だと捉えられる原因は主に4つあります。
- 学費や入学金を無駄にしてしまう。
- 最終学歴が高卒になると、就職に不利になってしまう。
- 奨学金の返済がスタートしてしまう。
- 今まで応援してきた親の気持ちも落胆させてしまう。
では、この中で、あなたが「許せない!」とまで思ってしまう理由は、なんでしょうか。
もちろん①②③の要因もあると思いますが、
一番の苦しみは④の、裏切りにも似た気持ちの問題ではないかと思うのです。
大学合格までの道のりはきっと険しい道のりだったと思います。
有名塾に通っていたならば、塾のお金だってたくさん捻出してきたと思います。
家族で協力体制を整えて応援してきたはずです。
特に両親はいろいろなことを犠牲にして、兄弟もなにかしらを我慢していたはずです。
そんな家族みんなの思いを踏みにじったような気持ちになるからではないでしょうか?
そして次に気になるのが、②の就職に不利になることへの懸念でしょう。
就職の条件に、大学卒業以上、という条件がついている企業は大変多いです。
特に、給与が高いとされている業種は、たいていが「大卒以上」という条件付きです。
生活に不自由しない、安定した収入の仕事に就いてほしいと願うのは、親なら当然でしょう。
大学を卒業した、というだけで就職の選択肢が増えるなら、頑張って卒業してもらいたいと思うのも親心ですよね。
また、③のように、奨学金を借りている人は、中退すると返済が始まります。
まだ経済的な基盤ができていないのに奨学金を払わないといけないので、
困窮し親が負担せざるをえない場合も出てきます。
以上、親の意見・気持ちをあげましたが
それでも、子供の人生は子供のものです。
大学生ともなれば、もう子供扱いする歳でもありません。
親にできるのは、彼らの決意・本心に耳を傾けること。
口を挟むことなく、反論することなく、まずは子供の話をじっくり聞くことです。
その上で、人生の先輩として送れる『アドバイスや代替策』を伝えてみてはいかがでしょう。
大学を中退したい…子の意見・理由から見る【親にできる提案・代替策】
では、子どもの方の意見も聞いてみましょう。
中退を希望する学生の理由は、一般的に大きく4つに分けられます。
- 経済的な理由(急に母子家庭になったなどの、家庭環境の変化)
- 精神的なものも含む病気やけが
- 転学や留学など、ほかにやりたいものがある
- 学歴不振や、就学意識の低下
①や②などの理由の場合
すぐに退学、ではなくて、しばらく休学という選択肢もあります。
それから、就学支援制度をよく調べて利用できるものは利用していく、という手も提案できそうです。
③の理由の場合
思っていた大学と違っていた、他に学びたいものが見つかった・・・などの理由であれば、
子どもの今後の計画などをよく聞いてみるのも親の役割かもしれません。
もし、中退後のことに関して計画性があり、進むべきものがしっかり見据えられているのであれば、むしろ、そこからはチャンスをつかむ時なのかもしれません。
④就業意欲の低下の場合
しっかりと子供と話し合いの時間を設けられるとよいですね。
なかには、サークル活動やアルバイトが生活の中心になって、学業がおろそかになった結果、単位を落としている、という学生も少なくありません。
改善策はないのか、もう一度立て直して頑張ってみるのか、それとも働くことへ舵をきっていくのか、さまざまな選択肢を話し合えそうです。
成功するのも、失敗するのも、本人の人生です。
ぐっと堪えて、本人に決めさせることも大事になります。
ここで失敗を学ぶことが、人生の大きな転機に変わるかもしれません。
冒頭でもお話ししたように、私自身も大学を中退した人間です。
希望の業界にとびこみ15年近く仕事を続けて今に至ります。
「中退」という決断がその後の人生をどう左右するかは、結局のところ「本人次第」です。
こちらの記事では、大学を中退するか悩まれている本人向けに書きました。よかったら合わせてご覧ください。
息子の大学中退は逃げ?甘え?「主体性」ゆえの決断か見極める
なにより大事なのは、頭ごなしに否定をするのではなく、中退したいという息子さんとあなたが、腹をわって話し合うことでした。
その中で、子供の本心をきちんと探っていき、主体的な決断なのかどうかを見極め、
それにあった適切な選択肢を提案してあげること。
これがベストな対応ではないでしょうか。
なかには、「今の状況から逃げたい。」「しんどいからやめたい。」など、ちょっとした甘えから
中退したい、という決断に至った可能性もあります。
ただ、それがすべてダメだということではないと思うのです。
大事なのは、これから先の計画性です。
漫然と、「思っていたのと違ったから、別の大学にうつりたい。」と思う状態ではダメです。
「~このような点で、自分が学びたい分野とは少しずれていたし、〇〇のようなゼミが他学部の中でも見つからなかった。
自分は〇〇の分野について研究したいから、〇〇というゼミがある〇〇大学〇〇学部に転学したい。
そのために、~~~。」
と、詳しく人に説明できる状態まで詰められていれば、安心して中退の同意書に判が押せることでしょう。
・とっていない授業の中に、興味深いものは他にないのか。
・他学部に、学びたい授業やゼミはないのか。
・転学するなら、どのような計画をたてているのか。
・サークル活動や部活動などは今どのように活動しているのか。
・今後の生活費はどのようにする予定なのか。
・今まで支払った学費に関してはどのように考えているのか。
・就職活動はどのように考えているのか。
これらの事を詳しく尋ねて明確な返事が返ってくるようであれば、心配ないでしょう。
現在、大学を中退した人にも就職活動の機会を提供してくれる
「リバラボインターンシップ」
というシステムもあります。
学歴や職歴に自身のない人も誰でも無料で参加ができ、インターン中はスキルを学びながら給料が支給される制度です。
学歴がなくても、スキルを磨けば十分に活躍できる時代でもあります。
子どもの決断に「主体性」が見えたら、あとは見守るのが親の役目です。
ここからは、あなたの人生ではなく、子どもの人生です。
まとめ
いかがでしたか?
中退したいと言ってきた子供に対して、冷静に向き合う心の準備ができたでしょうか。
当時「理解不能だ。」と言った私の両親ですが、私が今後のことについて熱く語ったら
「なにを言っても無駄だと思った。」と同意書に判を押してくれました。
そのときに私の意見を尊重してくれた両親には、ものすごく感謝しています。
あれから15年以上がたち、現在わたしは高齢の両親の家の横に家を建てて、3人の子供達は大好きなおじいちゃんおばあちゃんの家と自分の家を毎日行き来しています。
あのときの感謝の気持ちを、いま違うかたちでお返しをできたらと思って日々暮らしています。
あなたも、息子さんと腹をわって話し合い、良い選択肢が見つかることを願っています。